テンプレート:グフ テンプレート:ザク テンプレート:旧ザク
暗黒の朦朧 4
・ 前回までのあらすじ

ヴィンバレリーの各地で 200年に1度生まれる ” 大陸の生贄 ” を 出現させる儀式や、
その存在を葬り去る組織が見え隠れしていた。
人と、人以外の者から その赤ん坊は生まれると言われ、人為的な交配の強行の結果、
亜人が生まれ、その存在が確認され始めていた・・・

ヴィンバレリーで最強を誇る ちからの象徴、” ファゼル ”
このファゼルの能力に匹敵する力を ” 大陸の生贄 ” が持つとするならば、
再び戦乱の時代が訪れ、ヴィンバレリーの覇権を巡るように、その赤ん坊を
力無き者たちは 欲するのだろうか・・・?






ウ゛ィンバレリーの北部大陸、クレスマハイオ。

その西側の岩山で異変が起ころうとしていた。


  dscf2895_edited.jpg




自分の正体が分からないとき、人間は深い恐れと不安に苛まれ、果ては絶望という 淵に陥る。

暗闇の中に一人倒れていた少女もそんな状態だった。

少女が目覚めた時、既に陽は沈んでおり、周囲には飢えたウルフ系モンスターの群れが 少女を取り囲み、睨み付けていた。

少女は身の危険よりも、自分が ”何であるか”という事の方が重大であった…


”何故ここにいるのか?、何故こうなったのか?”


自分の素性すら 全く分からない。
思い出せないのか、それとも もともと記憶となるもの自体がないのか。


ウルフ達は かれこれ数時間迷っていた。


”目の前の獲物を狩るべきか”


”この場から逃走すべきか”



震える少女を前に、ウルフ達は二つの葛藤に苛まれながら そこに在る。

この岩山の中で久々に出会った獲物を前に、飢えたモンスター達は もはや自らの”野性で培った勘”すら信じきれず、一斉に少女に牙を向けた…




barghest_large5.jpg








《暗黒の朦朧 4》

【リュスアル】








――――その岩山から 6キロ程離れた場所に、人口41名の小さな集落があった。

その【ツァポスク】という村に、リュスアルという少年が 母親と二人で暮らしていた。

リュスアルは 夕食の最中、急に立ち上がった。

『どうかしたの?』

『女の子が泣いてる声がする…
助けに行かなきゃ!』

そう母親のサシャンナに言うと、リュスアルは夜の闇へと走り去ってしまった。

やれやれといった面持ちで 食器を片付けると、サシャンナは息子の服を繕いはじめた。

リュスアルには特別な能力がある。
母親が夜中に飛び出した息子を心配しないのも そのためだろう。

普通の子供と容姿こそ変わりないが、10才に満たないその体には、大人の以上の…
いや、人間の身体能力を遥かに凌駕する能力を内在させていた。

体力や腕力、知覚、知性、洞察力そして なにより目立つ能は ”ファゼル”の能力値。

ファゼルの能力に恵まれ、生まれてくる者は1万人に一人と言われる程の希少さ故に、普通の人間からすれば 異質である。

このクレスマハイオ大陸では、ファゼル能力者を尊重し、帝都に取り立て、上等騎士の道を約束される。


南部に位置する 【ニウ゛ルヘイム大陸】では、ファゼルの能力を持つ者を 異端と見なし、迫害や投獄、影で抹殺すらしているという噂もある。



 060911-113032.jpg




しかし、このクレスマハイオ大陸で生まれ育った 先程のリュスアル少年に関しては、そういった特別な扱いはなされていない。
何故なら、リュスアルが持つファゼルのことを知っているのは、母親のサシャンナだけだからである。

リュスアルが 四歳の時、サシャンナは息子の能力に気付いた。

サシャンナは息子に、ファゼルの能力の事を 他の人間には明かさぬように言い付けた。

頭の回転の早いリュスアルは その言い付けを、今も堅く守っている。

リュスアルもまた直感しているのだ、自分の能力が誰かに知られた時、自分や家族を取り巻く世界が 大きく変化するという事を…

そして何か得体の知れない 暗黒の手が差し延べられる事も…。










>>>続く






・リュスアル・・・ かなり強力な ファゼルの能力を持って生まれた少年。
           母親との二人暮らしをしながら 自身の能力の事は世間に隠している。

・サシャンナ・・・ いつからか ツァポスクの村に子供を連れて住み着いた 美しい女性。
           リュスアルの母親である。 息子のファゼルに気づいているのは現在
           彼女だけである。

・少女・・・ 目覚めると そこは森の中。
       記憶のない自分と、周りを囲み唸るモンスターに怯える。

2008/04/17 | 暗黒の朦朧 【自己満足小説〜刻獣外伝〜】 | コメント(2) | トラックバック(-) | page top↑
暗黒の朦朧 3
・前回までのあらすじ

3つの大陸で成り立つ ヴィンバレリーには 奇妙な伝承がある。
その伝説は、3大国家が成立した、数千年前から 存在するという。
” 大陸の生贄 ” と呼ばれる 赤ん坊が ” 小さき王 ” と ” 蒼き母胎 ” と
接触した時、世界が変わるというものだった。

” 大陸の生贄 ” を信仰する怪しい教団では 200年に1度起こる
月食の晩に非道な儀式を執り行っていた。
そして 小さな村でも 似通った事件は起こっていた・・・








ペーズ村に 重々しい剣を携えた男達が数人現れた。
黄昏れ時で 彼等に気付いた農民は殆どいなかったのだが。



コンコン…


ドアの中からやつれた男が顔を出した。

『なんか用かね?』

後ろの方で部下を待機させ、1番格上と思しき男が家の主に囁いた。


『月食の晩に生まれた悪魔の子に会いたい』

主は ジロジロと男達を見回した。


『あんたら、お役人かい…』

いつも 悪い噂を立てようと、興味本位でやってくる連中とは異質なものを感じ、主は彼等を家へ招き入れた。


『なんだい、こんな夜更けに!』

険しい顔付きで食いついて来たのは 主の妻のようだ。


『悪魔の子の母親は?話が聞きたいのだが…』

女は一瞬嫌なことを思い出して 瞼を固く閉じ、眉間にシワをよせて前屈みに壁にもたれた。




『ランなら死んだよ…』









《暗黒の朦朧 3》


【選ばれし子】








ふた月前…
ランが怪物に襲われた日の次の晩に、夫妻は町から戻った。
家の中にランがいないのをおかしく思い、夫婦は家畜小屋を見に行くと、苦しげに悶えるランがいた。


『かぁ…たすけ…うぁぁッッ!!』


ランの腹部は 大きな風船の様に膨らみ、両足の間からは既に破水しているのが見られた。

何が起こったのか全く状況が掴めなかった両親は、一刻も早く医者に見せようとランを抱き抱えようとすると、強烈なランの悲鳴とともに ランの股下に何かが飛び出した。

よくみると それは赤子であった。
ランは産み終えると そのまま息を引き取った。
白目をむき、顎は外れんばかりに広がり、ランの死に顔は見るに堪えないものだった。


Gustaf2Horse.jpg





剣士は大まかにその日の話を聞き終えると、

『その赤子に会わせてくれ』

夫人は冷たく言い放つ。

『キサラは二階のベットで寝ているよ…病弱で動けないんだ。
もっとも、もう赤子じゃないけどね』

そう言うと、女は奥の部屋に閉じこもり、亡き娘の無惨な死を思い出してすすり泣いた。

家の主に誘導され、剣士達が 悪魔の子の部屋の前に立つと、格上の男は何かを感じとった。
男は右腕を押さえると、
部下達にサインを出し、ゆっくりドアを開けた。




キサラは 頬のこけた顔でこちらを既に見据えていた。
彼等が来る事など、とっくに分かっていたように。


『今年は早かったね、もう少し休んでいれば、私にも力がついたのに…
つまんない…』



生後二ヶ月の赤子は どうみても 10才前後の少女であった。


『間違いない…貴様【大陸の生贄】だな…』

剣士の右腕の骨に得体の知れない、共鳴音が響いた。


ニコリと笑うと キサラは枯れ枝のような腕で人形を持ち上げると、

『勝手に変な呼び方するのやめてよね、毎回毎回聞き飽きちゃった!』

その言葉が終わるや否や、剣士の剣に銀色の魔気が流れ、少女の首をはねた。
床に転がり落ちた頭部は ほくそ笑んだまま沈黙した。

腰を抜かして震える 家の主に、剣士は黄金貨を十数枚手渡した。
農民が数年は生活に困らない額であった。

『埋葬はこちらでやる、今宵の事は忘れるのだ』

キサラの死体を袋に詰め込むと、剣士達はその家を後にした。

おびただしい血で汚れた部屋に 妻が入って来て、腰を抜かしている夫を起こして呟いた。

『この世に産まれちゃならない子だったんだよ』


『おっかねぇ…』


部屋の掃除を始めた妻に 震える口調で 夫は続けた。



『ランが産んだのは、三つ子だ…』



黙ったまま 妻は床の血をモップで拭いていた。
そして シーツを窓から投げ捨てると、

『棄てた赤子の行方なんか知らないんだ、もう忘れな…』


『何でキサラも棄てなかったんだ!』


1番ランの面影があったから…
妻は心でそう答え、一階へおりた。








【タンガロア大陸・丘陵】




    DSC05875.jpg



はぁはぁはぁ…

走り疲れて 息の上がる男女の影。

バーニーに手を引かれ 走るのはユウアであった。
彼女のお腹は膨らみ、走りには無理が見えた。

それでも二人は逃れるために走った。

『ユウア、あの洞窟で少し休もうか!』

声もなく ユウアは頷いた。


バーニーは 枯れ木を集めると 自分の上着の一部を破り取って火を起こした。
火に照らし出されたユウアの顔は 青白く、儀式の日よりも痩せていた。

しばらく黙ったままの二人だったが、沈黙を先に破ったのはユウアだった。


『私…何を産むの…』


儀式の事は 彼女から打ち明けられていた。

『何が生まれてきても、僕たちの子として育てる』

薪の火を睨むようにバーニーは答えた。
バーニーの力強い声に 嘘など微塵もなかった。
ユウアはバーニーにしがみつくと 声にならない声で ”産みたくなぃ”と口元を形どった。

監禁されていたユウアを バーニーが見張りについた時、ようやく二人は久々に再会を果たした。

そしてユウアの望みを叶えようと、二人は教団から脱走した。


『どこか静かな町に落ち着いたら、結婚しよう…』


バーニーは この教団がおもてむきに行っている 慈善活動に惹かれて入団したものの、本部での不可思議な動きや 少女達の不自然な保護などを目の当たりにし、退団を考えていたが、ユウアを残して去る事が出来ずにいたのだ。

数ヶ月ぶりに再会した彼女は別人のようにやつれ、そのお腹は丸みを帯びていた。

実の父親に 無理矢理危険な儀式に その身を投じられ、人とも知れぬ男の 種を植え付けられたユウアは、死か あるいはバーニーだけが救いであった。

二人の間に 男女の関係は無かったが、強く愛し合っていた。

狭苦しい洞窟で 二人は肩を寄せ合い、静かに夜明けを待った。




平穏という名の 未来の夜明けを…



     PB020070.jpg








>>>続く



2008/04/17 | 暗黒の朦朧 【自己満足小説〜刻獣外伝〜】 | コメント(2) | トラックバック(-) | page top↑
| ホーム |