・前回までのあらすじ
反ファゼル大陸 ニヴルヘイムでは、ファゼルの能力をもって生まれた
子供達や人間を暗黙のうちに処刑していた。
それに対する反乱分子が 最近では力をつけ始めている。
若きリーダー(アキタカ)は 処刑されるはずのファゼル能力者たちを助け、
解放軍の力を日増しに増大させていった・・・
【 ビューク・キングダム 】

「 して、まだ反乱軍の詳細は掴めんのか?」
「 苦労して捕虜にした 反乱軍の者も拷問にかけましたが アジトや関係者の事
一切語らず 拷問の最中死にました・・・
反乱軍の指導者に対して かなりの信頼を寄せているのかと思われます 」
鼻で重い空気を吹き出すと、白髭の老人は玉座から兵隊長を見下ろした。
定刻になったのだろうか、侍女が老人に薬を運んできたのを 血管の浮き出た
年老いた手で受け取り 飲み干す。
「 一筋縄ではいかぬか・・・ 反乱軍・・・ フフフフ 」
厳つい鎧の男が 王の間に入ってくると、兵士長を下がらせた。
白髭の老人に よく顔立ちが似ている・・・
「 ゲンカク王、反乱軍の駆除、このムラマサにお任せください 」
ゲンカク・ビューク王は 白い髭を息子である ムラマサに向けると 目を細めた。
そして深くため息をついて見せると、右肘を付いて静かに瞼を閉じ 自身の髭を
弄び始めた。
「 伝統にもなっている このファゼル狩りだが、もうワシは疲れておる・・・
このファゼルの抹殺や、クレスマハイオ大陸の帝都との対立は、憎しみから
続いてきたわけではない・・・古い約束から続いておるのだよ、ムラマサ 」
ムラマサは 訝しげに敬愛する父王を見上げてみせる。
齢80を越えても いまだに王座に君臨し続けるゲンカク王の悩みは このムラマサを
始めとする4人の王子の 誰を次期王とするかであった。
「 お主が 長男であったならばな・・・ 」
第一王子 ジュンガ・ビュークは 横暴、強欲な性格で、国よりも己を第一と考える性格で
かつ残忍な男であった。
第二王子 シグレ・ビュークは 優しすぎる性格で、国よりも学問に没頭しており、肉体も
ひ弱で 医者に短命と宣告されるほどであった。
第三王子 リュー・ビュークは 奔放な性格で、国よりも女を愛した。
既に 後継の権利など放棄して タンガロアの恋姫の下に通い詰めである・・・
そしてこのムラマサは 4番目に生まれた。
懸命で、節度があり 武芸にも長け、 国のしきたりにも忠実な 文句のつけようのない
王子で、家臣達からの信頼も厚い。
ニヴルヘイム大陸の大部分の統括権は すでにジュンガ第一王子にあるものの、
ジュンガが全てを欲するのは 時間の問題であった。
ゲンカク王が数年前に暗殺未遂に遭った時、一番に疑われたのは やはりジュンガ第一
王子であったが、証拠不十分ゆえに 罪に咎められるまでには至らなかった。
4男を後継者とした時、ジュンガがとる行動は 目に見えている。
王位をかけて ムラマサに戦争を仕掛けてくるに違いない。
ただでさえ内乱の多い このニヴルヘイムで、王権をかけての戦争が巻き起これば、
反乱軍に足元をすくわれ 国自体を落とされる可能性すらある・・・
「 古い約束・・・とは・・・? 」
「 国王のみが知る、が、 お前には話しておこう・・・
初代ダイゴー王は ファゼル大戦で破れ、国と命を助ける代わりに 女帝と
ある契約を交わしたのだよ。
”ファゼルの増殖を抑える手助けをして欲しい” と。 」
「 おかしな話です、女帝とは かのルアルテム・ミーロでございましょう?
彼女はファゼルの王、ラルクス・ミーロの実姉、なぜ 弟と同じ能力者を減らす
手助けをしろと・・・?
かの 月姫も ファゼルを恐れていたということですか? 」
「 いや、ファゼルにも匹敵する力は 実はあるのだよ・・・ 」
「 200年に一度の ”大陸の生贄” と言われる赤子ですか? 」
ゲンカク王は首を横に振って 聞いたことのない言葉を発した。
「
セルジュ・・・ そして、ファゼルは餌に過ぎぬのだと かの姫君は知っていたのだ・・・」
暗黒の朦朧 7『 セルジュ 』