・ 前回までのあらすじ
200年に1度生まれる 「 悪魔の力 」 か はたまた 「 神の子 」 か。
この年の ” 大陸の生贄 ” という、人と人外から生まれた赤ん坊の消息が
掴めず 苛立つクレスマハイオ大陸の ファゼル騎士団。
一方、
” 大陸の生贄 ” を崇拝する 名も無き教団によって 作為的にこの世に
生を受けた ロッシュは 自分がこれ以上 自分と同じ境遇の亜人達を増やさぬよう、
母と同じ犠牲者を出さぬように考え始める・・・
まだ幼いロッシュには 難し過ぎる課題であったが、決して教団を許せる筈は無く、
いかにして この呪われた歴史を塗り替えるかに 粉骨細心尽力すると心に誓う。
そして 真実の ” 大陸の生贄 ” が誰なのか?
生きているのか、死んでいるのかすら不明のまま 月日は流れ・・・
「 こっちに 沢山生えているよ、イネス! 」
健康的に日焼けした少年に手招きされると、美しい娘が 穏やかな表情で頷き、
右手を差し出した。
岩場の多いこの辺りは 足場が悪く、怪我をしやすい。
習慣になっているのだろうか、 リュスアルはイネスの白い手をいつものように
引き上げてやった。
「 ありがとう、 リュス 」
照れくさそうに イネスから顔を背けて 必死に茸摘みをしてみせる若者に クススクと
イネスは意地悪く笑って見せた。
リュスアルが 初めてイネスを見つけた日から 7年の月日が流れていた。
少女だったイネスには記憶も名前もなかった・・・
二人は背丈も伸び、思春期を迎える年頃までに成長し、いつしか兄妹の様な
感情から、異性として意識しあう気持ちに変化しつつある事に気づいている。
茸を千切る手を止めると イネスはリュスアルに呟いた。
「 何だか・・・ 最近怖いの・・・ 」
「 一体 何が怖いんだ? 」
地面を見つめたまま考え込んでいるイネスが 体を小さく震わせたのがリュスアルには
感じ取れた。
「 今まで 名前や記憶が思い出せなくっても ちっとも不安じゃなかったの・・・
リュスと サシャンナさんがいてくれたから 平気だった・・・ でも・・・ 」
数滴 イネスの目尻から透明な雫が散ったかと思うと 次の瞬間
イネスはリュスアルに しがみついた。
リュスアルに彼女の不安が伝わる・・・
「 思い出したくない・・・ 全てが壊れてしまいそうで怖いよ リュス・・・ 」
「 大丈夫だよ、俺がずっと一緒にいる、絶対に! 」
リュスアルを見上げる涙目のイネスが 余りに愛おしかった。
イネスの体温を大事に感じるように抱き寄せると、二人の唇は自然と引き寄せられた。
暗黒の朦朧 9
『 闇に堕ちた 』 続きを読む »
テーマ : 自作連載小説 - ジャンル : 小説・文学
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